前回までに、対流現象ではミクロの運動が動的協力性によってマクロの運動に変換される仕組みを確認した。

これは軽い熱水が下にある力学的不安定が前提であり、この不安定を解消しようとする力、つまり浮力が原動力となる。そして分子の衝突による運動エネルギーの伝達が有り、その上で動的協力性が生じる。

当たり前の事だがもう一度確認すると、上から熱したのでは対流は起きない。(熱エネルギーの分布の偏りだけでは相転移は起きない)

この対流を積木の塔を崩す事と比較すると、どちらも力学的不安定である事が共通し、積木崩しでの重力に対応するのが対流での浮力、という対応関係が有るが、積木崩しでは崩れる事で安定化(力学的要請)とエントロピー増大という確率的要請のどちらも達成されているのに対し、対流では力学的要請が優先されエントロピーは系の内部では減少している。
積木崩しでは安定化と自由化が相乗関係にあり、対流では相克関係にある。

ここでは安定化原理が正のフィードバックを通して分子のランダム運動の自由化原理を抑えた事になる。
正のフィードバックによって安定化原理が自由化原理を抑制する事、それが相転移である。