ここで無機物と生命の連続と断続を考える材料として生体の新陳代謝について考察する。
新陳代謝はは下図の様に同化と異化の2局面からなっている。
異化(catabolism)は逆に高分子を分解してエネルギーを得る。
同化=エネルギー吸収=エントロピー減少=還元過程、
異化=エネルギー生産=エントロピー増大=酸化過程である。
無機化学の固化、結晶化に当たるのが同化であり、融解、溶解にあたるのが異化だが、上の関係は無機化学まで遡れるだろうか?
無機結晶を支配する「自由エネルギー最小化原理」は、化学反応が自発的には(つまり外からエネルギーを与えたり奪ったりしなければ)、ギブスの自由エネルギーを最小化する方向へ進むという事である。
これはギブスの自由エネルギーをGとすると、ΔG<0になる方向へ進むと表せる。
ここで
ΔG=ΔH-TΔS
H: エンタルピー
ΔG=ΔH-TΔS
H: エンタルピー
S: エントロピー
G: ギブスの自由エネルギー
T: 絶対温度
上の式から、エネルギー準位はより低い方へ(発熱の方向)、エントロピーは大きくなる方向へ反応が進む事が分かる。
T: 絶対温度
上の式から、エネルギー準位はより低い方へ(発熱の方向)、エントロピーは大きくなる方向へ反応が進む事が分かる。
この二つの方向が逆になる場合、即ちエネルギー準位低下がエントロピー減少になる場合は矛盾が生じる事になる。
この様な例とは具体的には気体、液体、固体の相転移が先ずそうだ。
エネルギー準位は気>液>固であり、エントロピーも気>液>固である。エネルギー準位を下げるために液体が凝固すると「エントロピー増大」原理に反し、エントロピーを増大させるために固体が液化すればエネルギー準位は上がる事になる。
常温で固体の岩石はエネルギー準位を下げる傾向がエントロピー増大の法則に打ち勝って自発的に固化、
大気はエントロピー増大の法則がエネルギー準位を下げる傾向に勝って気化し、大気、海、大地の分離という秩序が生まれている。
常温で固体の岩石はエネルギー準位を下げる傾向がエントロピー増大の法則に打ち勝って自発的に固化、
大気はエントロピー増大の法則がエネルギー準位を下げる傾向に勝って気化し、大気、海、大地の分離という秩序が生まれている。
また酸塩基反応も塩と水の方がエネルギー準位は小、エントロピーも小であり、自発的に結晶化(エントロピー減少)の方向へ向かう。
それに対しエネルギー準位の低下とエントロピー増大の方向が一致する場合とは水酸化ナトリウム(NaOH)の様に水に溶けると発熱する場合である。
結晶の水への溶解が発熱反応になる場合と吸熱反応になる場合があるのは結晶の格子エネルギーの大きさが異なるからである。
格子エネルギーとは結晶を作る粒子(原子、分子、イオン)が気体から固体結晶になる時の凝集エネルギーであり、粒子間の位置エネルギーと粒子の運動エネルギーの和である。
格子エネルギーが大きいほど結晶格子は安定しており、そのエネルギー準位は低い。従って融解にも大きなエネルギーが必要であり、融点が高くなる。
一方でエントロピーは結晶より溶解して水和イオンになった時の方が大きい。従って、
NaOHの様な発熱の溶解では二つの原理の方向が一致しているが、
NaClの様な吸熱の溶解では二つの原理が戦ってエントロピー増大の原理が勝った事になる。
この溶解ー再結晶の平衡関係は温度と圧力によって変化する。
結晶したNaClも温度を上げていけば再び溶解する。
これは矛盾する2原理のせめぎ合いの結果が温度によって変わってくるという事だ。
これは理系で大学を出た人にとっては当たり前の事なのだろう。
しかし僕にとっては大きな発見だ。
「自由エネルギー最小化原理」の背後でエントロピー増大の原理とエネルギー準位最小化の原理がせめぎ合っていて、この二つは相克、相生の弁証法的関係にあるという事だ。
これは理系で大学を出た人にとっては当たり前の事なのだろう。
しかし僕にとっては大きな発見だ。
「自由エネルギー最小化原理」の背後でエントロピー増大の原理とエネルギー準位最小化の原理がせめぎ合っていて、この二つは相克、相生の弁証法的関係にあるという事だ。
そしてもう一つ、生体の新陳代謝ではこの二つが矛盾せず、常に協力関係にある様に変化しているという事である。
コメント