僕が今最も心ときめくテーマがいくつかある。箇条書きにして見ると


(1)生物の体節形成と水面の波紋に共通する秘密を探る

(2)結晶の繰り返し構造と生物の細胞分裂との相似象を考える

(3)液体への複数の物質の溶解と再結晶の霊的意味を考える

(4)植物の世代交代の霊的意味を考える

(5)和音と色彩、特にコード進行と色相環の相似象を考える

(6)発光スペクトルと吸光スペクトルの差をゲーテやシュタイナーの色彩論と、またオーラソーマと関連つける


などなど。
 




(2)の溶解と再結晶についてシュタイナーが言及している。

鉱物の集合自我は、鉱物が溶解する時は常に喜びの感覚が生じ、逆に固体化する時には苦痛の感覚が生じる。食塩を水に溶かせば、満足感が生まれ、逆に冷却して食塩の結晶を析出させると、痛みの感覚が生まれる。 、

この事実を宇宙的な関連の中でイメージするなら、地球の形成や鉱物の形成がこのようなプロセスといかに関連しているかがわかる。地球の形成を遥か昔まで遡り辿っていくと、現在よりも、地球の温度が益々上昇し、熱くなっていき、レムリア時代では、岩石が溶解している状態、つまり現在においては完全に固く結晶化してしまった鉱物が、今日の溶鉱炉の中で鉄が液体化しているように流れ出している状態に到達する。

鉱物は皆このようなプロセス、つまり食塩水を冷却すると溶けていた食塩が沈殿するようなプロセスを経てきた。このように、地球上では全てが固体化し結晶化してきた。このような固体化は、液体状の地球の中へ集結した結晶が次第に沈殿化していく形で進行した。このような固体化によって、地球は今日の肉体を持つ人類の棲家となり得た。 

この固体化はある特定の時期に頂点に達し、今日(1907年)この頂点の時期は過ぎている。今日、既に部分的に多少とも溶解プロセスが生じている。地球がその目的に達した時、そして人間がもはや地球から何も引き出せなくなるほど浄化され霊化された暁には、地球自体もまた霊化される。

その時には、地球の鉱物的な含有物は全て精妙なエーテルになり、地球は物質化する前のアストラル的状態に移行する。物理的な溶解過程は、地球がこの状態に到るための過渡的状態である。 

この地球が、今日の進化段階で順次進化するための固体化した舞台、つまり基盤に至った準備時期を考察してみると、絶え間ない地球の受難プロセスが存在した。固体化を進めることで、地球は苦しみ、「苦痛に喘ぎ呻いてきた」。人間の生存は、地球の苦痛を通して獲得された。いわゆるアトランティス時代の初期まで、この地球の苦痛が増していったのが認められる。

人間が次第に自らの浄化を行うようになった時から、地球も再び苦痛と受難から解放される。この溶解プロセスは、まだそれほど進んでいない。人間の足下にある大部分の固体の地盤は、今日も猶、苦しんでいる。その地盤へ向けて霊視するなら、固体は地球の苦悩であることがわかる。



これは1907年、大体「薔薇十字会の神智学」と同じ頃のシュタイナーである。

ここでは「受難とそれからの解放」というグノーシス的テーマが「溶解と再結晶」の中に語られている。溶解が解放と、結晶が受難と対応しているのだ。

前にヨーロッパ神学・哲学の多くで「下降と上昇」のテーマが共通している事、伝統的キリスト教神秘主義では世界の成り行きが下降であり神への回帰が上昇だが、ブラヴァツキー、シュタイナーの神智学系では「宇宙と精神の並行進化」を説く進化論的構成のためにキリスト教神秘主義と統合できない事、などを指摘した。

このシュタイナーの溶解・再結晶論を読んで、なぜこのテーマに興奮するのか、その秘密の一端が解けた様な気がする。

このテーマには「世界の成り行きと魂の救済は新プラトン主義が説く様に逆行するのか、それとも神智学派の様に並行するのか」という大問題が凝縮されているのだ。