やはり無脊椎動物に関しては進化系統も発生の具体的な過程も分かっていない事が多いため、これ以上反復説を検討するのは難しい。

そこで少し発想を変えよう。「形のデザイン」という観点から大まかに種間の比較をし、その意味を考えるという観点である。

もちろん神経系、感覚器官、循環器の進化など具体的な勉強はもっと必要だし、まだ続けるつもりである。


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前に書いた通り「放射相称と左右相称」は「岩盤への固着から移動へ」という生活相の変化に対応しているが、「二胚葉から三胚葉への変化」もそれに対応していると考えられる。中胚葉からできる骨、筋肉、血管などはすべて強く敏速な運動に必要な器官だからだ。

クラゲなどは二胚葉・放射相称でも遊動するが、これは中間型であると考える。クラゲに中胚葉に似た「エントコドン」(中胚葉的な外胚葉)があり、そこから強い筋肉が発生するのがそれを示していると思う。

しかしクラゲの発生過程でさらに興味深いのはポリプからクラゲになる途中でストロビラという段階を経過する事だ。

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写真はこちらからお借りしました。
http://northvalley.web.fc2.com/jfish/mizu.html

これは体節を連想させる。ここで僕が言う体節とは節足動物だけでなく脊椎動物から植物、シアノバクテリアまで含む形のデザインの意味で使っている。

上の資料ではくびれは一つずつできていくようだ。それはムカデの体節形成に似ている。
前に書いた通り、同じ節足動物でもムカデの体節形成は頭から一つずつできていくのに対し昆虫の体節は同時に複数に分割する。正確に言えばこの二つは両極の理念型であり、多くの場合は二つの混合型、つまり端の方で節がはっきりした頃にその内側でも少しずつくびれが生ずる。
http://bashar8698.livedoor.blog/archives/15602504.html

三木成夫氏は体節形成には太古の動物の群体形成の面影があると見たが、同時にムカデ型から昆虫型への変化に植物の積み重ね体制から動物のはめ込み体制への転換を見てとった。

僕は積み重ね体制はシアノバクテリアまで延長できると考えた。そしてシアノバクテリアでは体節形成は文字通り群体形成である。

その一方で昆虫や脊椎動物の脊椎の様に初めに一つのものが同時に複数に分裂していく体節形成がある。これは動物の初期胚の分裂の仕方に似ている。

この二極の分裂の仕方を注意深く観察してみたい。

節足動物では体節ができた後いくつかが結合していく傾向があるが、これは昆虫類と甲殻類のみであり、端から一つずつ体節が増えていくムカデ型では結合は起こらない。
逆にはめ込み型の体節形成ではストロビラからクラゲが分かれていく様な分離は起こらない。

すると積み重ね型−ムカデ型の延長にシアノバクテリアの進化=分化の世界があり、この反対の極ではめ込み型−昆虫型の延長に体節の合体と動物初期胚の分裂様式がある、という模式図が描けるのではないか?
 
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体節が合体していく節足動物とは逆にクラゲはポリプが体節に分解していく事で生まれる。
積み重ね型(植物)、はめ込み型(動物)という空間的配置の背後には時間軸の逆転が隠されているのではないだろうか?