前に書いた様に、神秘主義の多くは世界の成り行きと霊性進化は逆行する過程と考えてきた。しかしシュタイナーにおいては霊性進化は星の輪廻転生の中で進行し、星の輪廻・転生が人間の意識と肉体の進化に対応している。従って宇宙の進化と人間の霊性進化は重ならなければなら ...
🔵 世界の成り行きと霊性進化 ③ ヘルメス文書
バッハオーフェンは帝政ローマ時代のプラトン研究者、プルタルコスを何度も引用し「太陽、月、大地の三重のエロス」というテーマを示している事は以前書いた。しかしプルタルコスの「愛をめぐる対話」を読むと、月を太陽と大地の中間者と見なす発想は出てくるものの、太陽は ...
🔵マニ教のグノーシス
西のグノーシス主義の代表がバレンティノス派のプトレマイオスだとすれば、東のグノーシス主義の代表はマニ教と言える。キリスト教神学の基礎を作ったアウグスティヌスは最低9年間マニ教の教師だった。ローマ建築の中庭を意味する「アトリウム」ではキリスト教徒とマニ教徒 ...
🔵 世界の成り行きと霊性進化 ② グノーシス主義
グノーシス主義を代表する神学としてヴァレンティノス派の大成者プトレマイオスの説を概観してみたい。下は僕が最もグノーシス主義を感ずるイギリスの画家、「魂の幻視者」の異名をとるウィリアム・ブレイクの描いた「ユリゼン」という名の神である。 ブレイク自身の説明で ...
🔵 世界の成り行きと霊性進化 ① 新プラトン主義
僕のブロ友で動物の骨は地球の固体部分に当たるのではないか?という問題提起をしている記事がある。https://blogs.yahoo.co.jp/himeraretasizen/40311000.html#40311377生物学では器官を動物性器官と植物性器官に分類する。神経系、筋肉系など運動、感覚に関わる器官が動物 ...
プラトン主義者 デカルト
或る日本のプラトン研究者はイデアの概念を現代人に最も分かりやすく説明すると、それは「曲線の方程式」のイメージに一番近いと説明していた。方程式の解は日本でもアメリカでも中国でも同じだ。また古代でも現代でも変わらない。つまり数学的論理は時空を超越している。と ...
ニニギノミコトと海幸彦、山幸彦
邇邇芸命(ニニギノミコト)からその息子、海幸彦と山幸彦の争いまでは一連の物語と考えられる。邇邇芸の妻、木花咲夜姫(コノハナノサクヤビメ)は山の神、大山津見(オオヤマツミ)の娘である。山幸彦の妻、豊玉姫(トヨタマビメ)は海の神、綿津見(ワタツミ)の娘である ...
スサノオ神話のユング的解釈
文化人類学者のパウル・ラーディンはネイティヴ・アメリカンのウィネバゴー族の神話の研究から「英雄神話の4段階」説を唱えてユングの元型論に大きな影響を与えた。それはトリックスター、うさぎ、赤い角、双子の4段階である。この4段階説がそのまま日本の神話に当てはま ...
体液に溶けた霊
古事記を読んで印象に残るのは人間の生理的現象が露骨に語られている場面が非常に多い事だ。食、性、排泄、女性の生理、出産、死、死体の腐敗、それらの生々しい生理的現象と神の結びつき、という点で、記憶、希望、予測、等の精神的な抽象名詞が神となるギリシャ神話と好対 ...
カグツチ神話 その意味連関の広がり
僕は、神話で「火」と「水」がどの様に扱われているかにさしあたり興味がある。火と水はどの様な民族でも非常に大きな象徴的意味を持っている。それはどちらも天から来るものである。火は雷としてやって来て山火事をもたらす。しかし上手く使えば暖房や料理など計り知れない ...
🔵 ディオニュソス論 再考
ディオニュソス論の再考はニーチェの「ディオニュソスとアポロ」の理念型がバッハオーフェンを読んだ後では、その普遍性に疑問を持たざるを得なくなってきた事による。 暗黒時代から初期ポリス成立期のディオニュソス教の性格についてはエウリピデスの記事で書いた通りであ ...
🔵 19世紀ヨーロッパ芸術のパラダイム転換
19世紀ヨーロッパにおいて芸術の基本的対立軸は3回大きく変動している。それを簡単に図式化すると次の様になる。17~18世紀 古典主義(ルネサンス)とバロック19世紀前半 古典主義とロマン主義19世紀後半 自然主義とロマン主義19世紀末 自然主義と反自然主義少し説 ...
フランス古典派のミメーシス論と三単一の規則
フランス古典悲劇が守るべき規範として君臨したアリストテレスの「ミメーシス論」とボワローの「三単一の規則」について説明する。欧米人にとって「古典」(Classic)とは古代ギリシャ・ローマの文化を指すのであり、特に悲劇の古典と言えばアイスキュロス、ソフォクレス、エ ...
ラシーヌとヤンセン主義 ②
「フェードル」はラシーヌの作品のみならずフランスの古典悲劇の中でも最高傑作と評価されている。「フェードル」のどんな所が評価されているのか?古代ギリシャの、特にエウリピデスの悲劇と比べてどんな特色があるのか?そこにヤンセン主義の予定説のペシミズムが影響して ...
ラシーヌとヤンセン主義
ラシーヌの悲劇「フェードル」を検討する前に理解のための前提となる知識を整理しておきたい。ラシーヌはヤンセン主義の教育を受け、その思想的影響を受けていると言われている。その点、同じ17世紀のフランス古典悲劇でもイエズス会のコルネイユとは対照的だ。同じヤンセン ...
🔵 新古典派とカルヴァン派
上の絵は新古典派の代表とされるジャック・ルイ・ダヴィッドの「ホラティウス兄弟の誓い」である。ダヴィッドの絵に関しては一般的には「精神性が高い」と評価されている。しかし僕は敢えて逆の事を書こうと思う。僕は彼の絵には稚拙さと不自然さを感じてしまう。まず、人間 ...
ブーシェ「水浴するディアーナ」
フランソワ・ブーシェはロココ様式を代表する画家である。彼の描く女性の裸体はバロック期の画家のような豪華さとふくよかさはもうない。その代わりにいかにも柔らかそうな肌触りと見る方が恥ずかしくなる様な生々しさがある。「水浴するディアーナ」は彼の代表作とされてい ...
モナド・・・・微分化された神 ③
(4)因中有果論因中有果論はそもそもインドの六派哲学の中で大きいテーマとして議論されてきたもので、結果として生ずるものはそもそも初めから原因の中に含まれていたものだ、とする説である。これは「無から有は生まれない」事が根拠になっている。神秘主義的なサーンキ ...
モナド・・・・微分化された神 ②
カール・シュミットはライプニッツを典型的な「バロック哲学」と見なしている。確かにルネサンス的な神秘主義と近代的な力動的世界観が混在している点ではバロック的と言えるかも知れない。「モナド間の予定調和」はアダム・スミスの「神の見えざる手」と見事に呼応し、近代 ...
モナド・・・微分化された神 ①
ライプニッツのモナド論について3回に分けて述べたいと思う。モナド論はその様々な時代的制約にも拘わらず、「大宇宙と小宇宙の照応、一致」という神秘主義の共通テーマを哲学的に考察した点で現代でも多くの示唆に富んでいる。時代的制約と言うのは、(1)まだ近代的原子 ...
レンブラントとテネブリズムの闇
レンブラントはカルヴァン派の人である。カルヴァン派とバロックは全く正反対の精神構造を持ち、彼が清貧、質朴を旨とする典型的なカルヴィニストだったなら彼をバロックに分類するのは間違いかもしれない。しかしどうやらレンブラントはカルヴァン派とはかけ離れた放蕩人生 ...
情念を表現するバロック彫刻
一番バロックらしい絵画がガウリ等の天上画とすれば、彫刻はベルニーニをもって嚆矢とする。サンタ・マリア・デッラ・ヴィットーリア教会の礼拝堂の祭壇にある「聖テレジアの法悦」は16世紀のスペインの聖女「アヴィラのテレジア」が体験した恍惚の瞬間を表現したものだ。対 ...
バロック天井画の劇場性
1527年の「ローマ略奪」はイタリア人の文化的優越感を無惨に踏みにじった。詳しい歴史的経過は略すが、一般人の虐殺、強姦、強盗、放火、ありとあらゆる破壊行為が行われたそうだ。この残虐行為への恐怖によってルネサンス文化は息絶え、ローマの対抗宗教改革とバロックが始 ...
ミケランジェロとバロック
今、目の前に「ダビデ像」の写真がある。「ミロのヴィーナス」と較べられる完璧な均衡そしてそれをも超える力動感。ルネサンスからバロックへの橋渡しをしたミケランジェロ。彼は画家、彫刻家、建築家を兼ねる天才であり大理石から神話の神々を掘り出す魔術師である。イタ ...
エル・グレコ ③ オルガス伯の埋葬
エル・グレコの最高傑作と評価する人が多いこの作品。グレコ自身も「我が崇高なる作品」と述べている。オルガス伯は本名ゴンザレス・ルイス。グレコが活躍した200年近く前、オルガスの領主を勤めグレコの教会区の教会だったサント・トメ教会の拡張のために尽力した。1312年 ...
エル・グレコ ② 恍惚の視線と法華経的歓喜
エル・グレコの宗教画で縦長のデフォルメや揺らぎと同じくらいに強い印象を与えるのが神や天使を見上げる澄んだ目である。この目は肖像画では表れない。後期宗教画の縦長にデフォルメされた揺らいだ人物、それも画面に一人だけと決められている。「縦長のデフォルメ」「体線 ...
エル・グレコ・・・信仰の炎の上昇気流
エル・グレコは1541年、ギリシャのクレタ島で生まれた。20代でヴェネツィアへ渡りヴェネツィア派のみずみずしい感覚的な色彩、ティツィアーノやティントレットの光と闇の表現を学び、その後ローマにも何年か滞在したが、1577年にスペインに移り、最終的に旧都トレドに定住し ...
🔵 ルネサンスにおける比例と円の神学
古代ギリシャの哲人、ピュタゴラスは「万物の根源は数である」と言った。「アホか?」と思う向きもあろうが、現代の物理学は「自然の根本原理が数式で表される」と考えている点でピュタゴラス主義を継承している。ピュタゴラスの数学的世界観は想像以上に深い。彼は音楽にお ...
円形ドームと性善説
フィレンツェの「サンタマリア・デル・フィオーレ大聖堂」(上写真)はゴシック様式からルネサンス様式への転換点に位置する。正面入口はゴシック特有の直線的な構造と過剰な装飾、しかし頂上はゴシックの高い尖塔ではなく、ローマ時代のパンテオン神殿を思わせる円形ドーム ...
ボッティチェリの「春」とルネサンスの性善説
上のボッティチェリの美しい絵は「プリマヴェーラ」(春)と題されている。 繊細で柔らかいタッチで6人の女性と2人の男性、上にはキューピッドが描かれている。6人の女性の内4人は半裸の姿だ。キューピッドを入れて9人、全てギリシャ・ローマ神話の神々である。 ボ ...





















