今回は完全に高校の化学の復習である。

水への溶解が発熱反応になるか吸熱反応になるかは結晶の格子エネルギーの大小で決まる。格子エネルギーが大きいほど結晶のエネルギー準位は低く、従って結晶は安定し、溶解は吸熱的になる。

では格子エネルギーは何によって決まるのだろうか?
それについては下の資料にきれいにまとまっている。


https://info.ouj.ac.jp/~hamada/TextLib/kk/chap8/Text/Cs900802.html



上の資料を高校化学の知識で補って整理してみると、

原子をイオンに変えるエネルギーは陽性元素の第1イオン化エネルギーと、陰性元素の電子親和力が大きく影響する。

イオン化エネルギーは大きいほど陽イオンになりにくい。
電子親和力は大きいほど陰イオンになりやすい。
従ってイオン化エネルギーは大きいほど、電子親和力は小さいほど、格子エネルギーは大きい。つまり結晶が安定している。




直感的にはエネルギー準位を下図の様に理解すれば良いと思う。


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水に溶解するためにはイオンになるだけでなく水分子と水和しなければならず、水和は発熱反応である。

第1イオン化エネルギーは最外殻の電子を一つ取り去って陽イオンにするために必要なエネルギーで、下図の様に最外殻電子数が2または8の希ガスで極大、1のアルカリ金属で極小となる。
 

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電子親和力は最外殻に電子を取り込む時に生ずるエネルギーで上とは逆に希ガスを極小、最外殻電子数が7であるハロゲンを極大とする周期を作る。

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周期表の中では下の様に周期が小さいほど(上の行ほど)、また同じ周期では族番号が大きいほど(右の列ほど)イオン化エネルギーは大きくなる。これは電子親和力も同じである。


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上図はこちらからお借りしました。
https://www.sidaiigakubu.com/examination-measure/chemistry/


そうすると右上の原子の陰イオンと左下の原子の陽イオンが結合するハロゲン化アルカリの結晶より内側の金属と酸素、珪素の結晶の方が安定しているという事になる。

実際にはイオン化エネルギーや電子親和力よりも電荷数や水分子との水和エネルギーの影響の方が大きいようである。
 

イオンになってからの静電引力(クーロン力)はクーロンの法則により、イオンの価数の積に比例しイオン間の距離の二乗に反比例する。
もちろんクーロン力が大きいほど結晶は安定している。

しかし実際には一つの陽イオンは多くの陰イオンと引き合っており、この相互作用を示す数値、マデルング定数によって誤差を修正する必要がある。

また現実の結合はイオン結合と共有結合に二分できるものではなく、電子雲が他原子によって変形すれば共有結合性を持つ事になる。

例えば水分子(H2O)は共有結合性70%、イオン結合性30%などと言われる。


クーロン力以外に共有結合の力が働く(これを「イオンの分極」と言う)場合はそれによっても誤差が出てくる。

分極は多価イオンほど大きく、
陽イオンはイオン半径が小さいほど、陰イオンはイオン半径が大きいほど分極が大きい。

クーロン力で近似できるのはアルカリ金属イオンとハロゲン化物イオンからなる結晶の場合。
分極が大きくクーロン力だけで近似できないのは多価イオンや遷移元素のイオンの結晶である。



しかし上の説明は霊的インスピレーションのためには少し詳し過ぎるようで、大まかにはイオンの価数が大きいほど、イオン間の距離が小さいほど結晶が安定と考えて良いようだ。

これを直感的に分かりやすく喩えれば、
エネルギー準位が高い結晶はゴシック建築的で隙間が多く力学的に不安定であり、エネルギー準位が低い結晶は円形ドーム的で力学的に安定していると言える。


この比喩は後で大きな意味を持つ事になるだろう。