今回の記事は共感覚を前提にした僕の独断的試論である。

絵画における線描重視と色彩重視の2傾向は、フィレンツェ派とヴェネツィア派に代表され、主としてヴェネツィア派の色彩重視の傾向がバロック絵画に大きな影響を与えていく。

これは、バロック音楽が和声重視の傾向を示すのと並行している様に思われる。
線描重視はメロディー重視にあたり、色彩重視は和声重視にあたる。
共感覚者にとって和声は色彩そのものだ。




ここで、和音連結(コード進行)と色彩とのより詳しい対応関係について述べてみたい。

ダイアトニックコードは、トニック系とサブドミナント系に分けられる。
トニック系は Am, C, Em, G7 である。
サブドミナント系は Bm♭5, Dm, F である。

ジャズピアノを練習した者は分かると思うが、トニック系のコードには全て同じフレーズが使える。サブドミナント系も同様だ。

例えば「枯葉」のコード進行
Dm7 ➡ G7 ➡ C ➡ Fmaj7 ➡ Bm7♭5 ➡ E7 ➡ Am というコード進行は、DmとAmだけに置き換える事ができる。G7とCとE7をAm、Fmaj7とBm7♭5をDmと考えればいいのだ。

ジャズ的に言えば「コード進行」とは詰まる所「トニックとサブドミナントの間の往復運動」なのであり、サブドミナントは本質的には転調なのである。いわゆる IIーVーI はサブドミナントからトニックへ戻る、IIIーVIーII はトニックからサブドミナントへ移る典型的経路なのだ。

Am Em Am E7 といったコード進行は、ずっとAmのフレーズを弾き続けても合う。しかしDmが間に入る事でフレーズの色調に変化が起き、コード進行が立体的になる。

色彩でこれに相当するのが、寒色系と暖色系である。青、緑といった寒色系と、赤、黄の暖色系を組み合わせる事で、絵画は華麗な印象を与えるようになる。

初期のバロック音楽が和声重視へと向かった事と、バロック絵画があいまいな輪郭と華麗な色彩の方向へ向かった事とは並行関係にあると僕には思われるのである。

フィレンツェ派とヴェネツィア派の違いを考える場合などに参考になるだろう。