「Let it be」はビートルズの中でもほとんど知らない人の無い名曲だが、これはもともとアレサ・フランクリンに捧げられた曲だった。
コード進行やメロディーがゴスペル風だと思っていたが、この二つの資料を見るとこの曲が紛れもないゴスペルソングとして作られたのだと確信する。
やはりレノンとマッカートニーもアレサのファンだったのだ。しかし歌詞を見たアレサは自分の信仰するバプティスト派の信仰に合わないのではないかと疑問を持ち歌うことを躊躇っていた。
そこでビートルズが自ら歌ってレコーディングしたのである。
ここに和訳がある。
ベトナム反戦運動の真っ只中にこういう歌を歌う事に抵抗感があるのは理解できる。長髪や麻薬などのヒッピー文化の或る側面がベトナム反戦運動を内部から腐敗させる為のCIAによる謀略だったと主張する人もいる。「なすがままにしろ」という言葉は「権力に逆らうな」「どうせなるようにしかならないんだ」というネガティヴなメッセージにも聞こえる。
しかし恐らくそれだけではないだろう。それは白人と黒人の間にこの頃にはまだ強いわだかまりが有ったのだ。
吉田ルイ子の夫は筋金入りの左翼の白人理論家だったがハーレムで黒人の暴動に巻き込まれた時、「Shit!」「Nigger!」などの言葉を連発しルイ子を震え上がらせ、後に離婚する遠因となった。
ウッドストックもロックの祭典でありサンタナやジミヘンは招かれてもアレサは招かれなかった。ロックとソウルの間にはまだまだ壁が有ったのだ。
しかし最終的にアレサがこの曲を歌ったのはレイ・チャールズの様に白人にも好かれる存在を目指したからだろう。その判断の素晴らしさがこの歌の素晴らしさをさらに引き立てている。
コメント