発生生物学で「モルフォゲン仮説」は完全に定着した様である。
これは 

(1)初期胚細胞で特定の細胞が分子シグナルを出す 。

(2)それが細胞膜を透過して胚細胞全体に拡散し濃度勾配を作る。

(3)その濃度によって細胞が胚の中での自分の位置を確認する。

(4)それによって最も基本的な分化の場、即ち前後軸、背腹軸、 左右軸が作られる。

というものだ。

この説はウォルパートによって理論的な仮説として提示せれ、その後、実際に幾つかのタンパク質がそれに同定されて、もはや揺るがない説になっている。

このモルフォゲン説は発生生物学におけるダーウィニズムとも言えるだろう。

しかし最近は「モルフォゲンは初期胚の特定の細胞で作られる」というウォルパート説の不合理が指摘され、それを拡張する「反応拡散モデル」がチューリングによって提示された。
それは「全ての細胞が或る条件を与えられるとモルフォゲンを生産し得る」というものだ。


下の資料は動物の体節形成をチューリング・モデルで考えようとしている。


チューリングの「反応拡散モデル」の根本的な発想は「動物の繰り返し構造を2つの波長の違うモルフォゲンのうねりと考える」という点にある。

これは驚くべき事ではないだろうか?。夢の中でノヴァーリスが示唆してくれた「水面の波紋と鉱物の結晶と動物の体節が全部同じ原理に拠っている」という秘儀、それがまさにそのまま起きている可能性が出てきたのである。