武道における筋力トレーニングについてもどうしても書かねばならない事がある。

ダンベルやバーベルを5~10回くらいしかできない重い負荷を掛けてゆっくり動かすようなボディービル的な筋トレはいかなるスポーツにとっても有害無益である。

何故なら、重筋だけを鍛える様なやり方では筋肉が付けば付くほどスピードが落ちて行くからだ。

医学では筋繊維に速筋と遅筋があるとされている。
白い筋繊維が速筋で赤い筋繊維が遅筋である。

しかし、重筋と速筋の違いは医学的には明らかにされていない。
医学的には解明されていないがスポーツ選手なら経験的に直ぐに
分かるはずの事項がまだまだたくさん有るということだ。
西洋医学を盲信してはいけない。

一般にスポーツ選手が行っているのは、少し軽めの(20~40回くらいできる)負荷でできるだけスピードをつけてやるやり方である。
これで重筋と速筋がバランス良く鍛えられる。



格闘技や武道でのパンチでは「纏糸勁」が重要である。これは足首の回転から膝の回転、腰の回転、肩の回転、と回転の力が下から上へ伝わって行くものである。

ここで重要になるのが腹筋と背筋(特に腹斜筋)のスピードである。
いくら見かけ上の動きができていても、腹筋と背筋にスピードが無いと、下半身の回転の力が上半身に有効に伝わらないのだ。
そうすると形だけは纏糸勁になっていても手だけのパンチになってしまう。

プロボクサーが凄いスピードで、しかもひねりを入れて腹筋と背筋のトレーニングをするのはそのためである。



古武道では筋トレに更に注意が必要である。

一般のスポーツではダンベル、バーベルを使って筋トレをやるのが
普通である。しかしこれは古武道では勧められない。

ダンベル、バーベルは動かし始める時と最後に止める時に最も負荷がかかる。これは発勁はもちろん、伝統派の空手とも矛盾する動きである。

伝統派空手の動きは、始めはゆっくりでもだんだん加速して最後にピシッと止めるのだ。これは発勁の動きと同じである。

この動きに合う筋トレはゴムチューブやエキスパンダを使うやり方である。中国の伝統派の武術道場ではほとんどゴムチューブを使って筋トレをしている。


また、日本の空手ではほとんどやらないのだが、中国武術では「気を練るための筋トレ」を必ず行う。

これは前屈立ちから後屈立ちへ、後屈立ちから前屈立ちへ、息を吐きながらゆっくりと変化させるものである。これによって下半身の気を練る事ができる。

ゆっくり動かす時と速く動かす時とでは使う筋肉が違うのである。

これは時間を分けて両方やる必要があるのだ。
同じ時間帯にやると、どちらも効果が挙がらなくなるのである。

次に武道と気功の順序である。
この二つはできれば時間をずらして行った方が良いが、その様な時間が取れなければ、気功を先にやりその後に武道という順序でなければならない。これは中国武術をやっている者にとっては常識である。

有酸素運動をやった後は身体が微細に振動している。この状態で気功をやっても全く効果が無い。書道の達人でもジョギングの直後では美しい字は書けないのと同じである。