BWV599からBWV644までの45曲のオルガン小曲集は「オルゲルビュヒライン」と呼ばれている。本来は164曲のルター派コラールを編曲するつもりでいたが実際に楽譜を書いたのは45曲だけだった。
ここに全曲の題名が載っている。
このオルガン曲集を作った目的はバッハ自身がはっきり記している。

>ここには初歩のオルガニストが,コラールを様々な仕方で展開するための手引き,さらにペダル演奏を習得するための手引きがある。
この中に収められたコラールでは,ペダルが純オブリガート風に扱われているからである。

つまりこれはオルガンの初心者の為の、特にペダルを対位法的に弾く為の練習曲だったのだ。
(しかし実際にはそれだけでなく会堂でのコラールの前奏、後奏として使われたと専門家は推測している。)

シュヴァイツァー博士はこのオルゲルビュヒラインは「バッハの音楽言語の辞書である」と指摘している。彼はこのオルガン曲集の徹底的研究によってバッハのメロディーに隠れたシンボリズムを発見したのである。

僕がまだ若ければ3年くらいかけてこのオルガン曲集とシンボリズムの研究に打ち込みたい所である。(笑)





その第1曲目、題名は「来たれ、異邦人の救世主よ!」





美しい曲である。どこかブクステフーデの「シャコンヌ Em」を彷彿させる神秘的なオーラを放っている。

しかし題名がどこかで見た覚えがある。何処だろう?
そうだ、「苦難の神義論」の記事で取り上げたこの曲だ。




よくよく聴いてみると、確かにメロディーに似た所がある。
恐らく同じルター派コラールから編曲したのだ。
探してみたら原コラールはここにあった。




BWV61とBWV599の原メロディーがBWV62の最後にしか無いとは何とシブいではないか! 

このモチーフはBWV659でも使われている。

            

この荘重なオルガン・コラールをバッハの研究家Nora氏はこう表現する。

冒頭の、夜のしじまの響き。
正に、待降節を象徴するかのようです。
単に美しいばかりでない、淡い微光に包まれたような超絶的な和音。
来るべき夜明け、必ず訪れる夜明けを待ち望む、夜の静かな鼓動、震えさえもが感じられます。
この曲はピアノ編曲でも知られ、例によってあのリパッティも愛奏していますが、この響きばかりは、オルガンでないと難しいかも。
そんな、この世のものとも思えぬ響きの中に、あの古風な名コラールが、静かに溶け込みながら、滔々と流れます。

https://nora-p.at.webry.info/200712/article_5.html