この振り子は縦横斜めどの方向にも振れる事ができる。そして振り子の支点(糸の根本)を正確な周期で揺らす。ただこれだけだ。
支点の強制振動を正確に行うため、クランク等の装置を使う。

ここで重要なのは、
(1)支点の強制振動と振り子の最初の振動を同じ方向にする
(2)強制振動の振幅は振り子の長さより短くする
(3)強制振動の速さは振り子の振動の速さに近くする
の3点である。強制振動の速さによって振り子の振動に様々なパターンが表れる。
全ての場合に共通するのは次の点である。
(1)まず振り子の振動が強制振動に共鳴して振幅が大きくなる。
(2)その後、強制振動の方向と垂直な方向の揺れが加わり始める。
(3)初めの揺れの運動と垂直な運動が合成され、楕円の様な動きになり、しかしその楕円が閉じずにその方向や形がどんどん変わっていき、非常に複雑な振動をする様になる。
しかしその全ての場合がカオスになるのではない。
(1)振り子の振動より強制振動が少し速い場合は、複雑な動きを何度も繰り返した後、規則正しいパターンに落ち着く。それは楕円と円を周期的に繰り返す(強制振動1回につき1度の割合で円を描く)ようになる。
振動の形の変化自体が強制振動と共鳴するのである。
これは準周期運動と言われ、カオスではない。
(2)カオスが表れるのは振り子の振動が強制振動より少し遅い場合である。
この場合、楕円の向きや形が不規則に変化する。
楕円の回る向きが時計回りから反時計回りに反転したりする。
同じ条件で実験しても、毎回違う結果になる。
ただしここで「同じ条件で」という言葉には注意が必要だ。
振り子運動の軌跡は微分方程式で定まっている。だから完全に同じ条件でスタートすれば、同じ軌跡を描くはずだ。しかし初期条件を完全に同じにする事は現実的に不可能である。
「初期条件に敏感である」という事が決定論と予測可能性が一致しない事の証明である。
カオス運動になるのは強制振動と振り子の振動の速さが近い場合だけである。その場合にのみ二つの振動の間に共鳴が起こり、運動は非線型効果に支配される。
*ここで振り子の軌跡は地球の重力と支点の強制振動という二つの力の影響を受ける。従ってこれはポアンカレの「三体問題」と原理的に同じだと考えられる。方程式は定まっていても解は定まらず、それを解く事ができないのだ。
コメント