ロジスティック写像はもともとは 生物の個体数の増加率を微分方程式で表した「ロジスティック方程式」 を差分方程式に変換したものである。

それは次式で表される。

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(aは定数)


これは簡単な数式にも関わらずカオスとなり得る典型的な例としてカオス理論でしばしば取り上げられる。




横軸にx(n)、縦軸に x(n+1) を取ってグラフに表すと下の青線の様に上に凸の放物線となる。

定数aの値が大きくなるにつれて放物線は縦長になるが、横軸の0と1を通る放物線である事は変わらない。

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このグラフの見方は少し難しい。
何故なら差分方程式はフィードバックを含むからだ。

グラフに有る緑の直線は f(n+1) の縦座標から f(n) の横座標へフィードバックするためのf(n)=x(n) の直線である。

xの初期値 x1 を横軸の赤丸のポイントとする。
(「x1」は「かける1」ではなく「エックス1」と読んで下さい。笑)

それに対応するf(x1)は x1 を通る垂直な線と放物線との交点の縦座標として得られる。


問題はここからだ。
このf(x1) がxにフィードバックされるのである。

それはf(x1) を通る水平な直線と緑の斜線との交点の横座標として得 られる。
これが x2 である。

同様に x3, x4 とグラフで求めていく過程を示したのが赤の折れ線である。


これを見れば分かる通り、xの値 は大きくなったり小さくなったりする。


(1)この時0≦a≦3ならば、x は次第に1点に収束して行く。
例えば a=2 の時、xは0.5に近付いて行く。



(2)3<a≦3.56 ならば、xは複数の値へ振動しながら収束。

この複数の収束する値をアトラクター(吸引子)と呼び、アトラクターが2つ、つまり2つの値を繰り返すように収束していく場合を 「周期が2である」という言い方をする。

アトラクターが4個あれば周期は 4である。



(3)3.6≦a の時、xは収束せず 、不規則な分散をする。

1万回繰り返しても同じ値は決して出て来ない。
これがカオスだ。


この時グラフはこんな風になる。



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(a=3.8197の場合)


初期値 x1 の値を変えると収束に至るまでの時間が変わるが、その収束値(アトラクター)は変わらない。
つまりアトラクターは a のみで決定される関数である。

そこで次に横軸にa 、縦軸に収束値を取って下の様なグラフを表す事ができる。

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これを「周期倍分岐図」とよんでいる。

左の方は1本だが、a が3を越えると2本に分岐する。
2本に分岐した部分は収束値が2つある、つまり周期2である事を示す。

3.4を越えた辺りから周期4になる。

a が増加するにつれ、周期は2の倍、倍と冪乗で増えていく。

周期の分岐は次第に早く起こり、a が3.7を越える辺りからカオスとなる。
つまり収束しなくなる。


このロジスティック写像が明らかにしたのは、決定論に従いながら予測不可能な系が力学だけでなく数学にも有るという事である。