「生物分布の不規則変動」はごく最近まで他の要因の干渉によるものと考えられていた。ロジスティック写像によって、他のランダムな干渉(ノイズと言う)が無くても不規則な変動をしうる、つまりカオスが生じる事が分かった。
そこで、自然の複雑な現象からノイズを除き背後の力学を抽出する事、それが規則的なものかどうか確かめる事が重要になってくる。
しかしそれは非常に難しく、流体力学におけるカオスと同様、現代でも十分な理論化はされていない。
ここでは問題の所在、そこにどの様な問題が介在しているかが示されるのみである。
通常の種の分布は他の種と相互に影響を与え合うので、天文学における多体問題と同様の「生物学上の多体問題」が生じる。
背後の力学がカオス的かどうかを分析する方法は確立されてはいないが、
(1)多次元位相空間を考える事
(2)そこで「奇妙なアトラクター」などの数学的標識を探す事
(3)ポアンカレ切断で直感的に見やすくする事
などが有効だと言われる。
生物分布以外でも、自然淘汰における遺伝型の選択、血球数が異常な変動をする病変、心臓のリズムの変調、神経制御系の異常、などでカオス理論が応用できると考えられている。
自然淘汰では、種差の多様性を維持するために小数派の遺伝型を増やす仕組みが存在する。例えば伝染病は高密度の(つまり多数派の)種の間により流行する事で小数派が生き残りに有利になる。
これは多数派が小数派を駆逐、絶滅する事を防ぐ負のフィードバックループであると言える。
その後、多数の個体と病原菌の相互作用の力学はカオス的に変動する事が分かった。小数派が常に有利とは限らないという事である。
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