第9章「化学時計とカオス」は化学反応式が難しい割にはカオス理論にとって重要な内容に乏しいので省略する。ただ次の3点が重要である。
① 化学反応の速度は反応物質のモル濃度のべき乗に比例するので、
その式は非線形である。
② 化学反応の一部は反応物質や生成物質が触媒になる事で速度に
フィードバックが起きカオスになり得る。
③ 燃焼も反応によって生じる熱が更に反応を促進するので
正のフィードバックである。
①の性質は平衡定数の哲学的意味を考える上で重要だと思われる。
第10章、11章はフラクタル幾何学である。
フラクタルは大まかには「全体と部分が相似である図形」と定義されるが、これを「自己相似」と言う。しかし厳密な自己相似は無限に小さい部分まで相似という事になり、自然界には存在しない。自然界のフラクタルは「部分的に」「大体相似の」部分が含まれる、といった曖昧なものである。
フラクタル図形の複雑さを表すのに「次元」の概念を使う。これには幾つもの定義があるが、どれも普通に言う次元、つまりユークリッド空間の次元の概念を核とし、それを拡張するように定義される。
相似次元 Ds を次の様に定義する。
或る図形がスケールを a分の1にした相似図形 b個に分割できる時、相似次元は
コッホ曲線とシェルピンスキーのガスケット
これは正方形は1/2のサイズの正方形「2の2乗」個に分解でき、立方体は「2の3乗」個に分解できる、という事から普通の図形ではユークリッド次元と一致する事が分かる。しかしフラクタル図形、例えばコッホ曲線(下図)では次元は整数にならない。
コッホ曲線は線分を3等分し真ん中を山形に替える、という作業を繰り返す事でできる。
シェルピンスキーのガスケット(下図)では元の図形を1/2にした相似形3つで元の図形と同じになるので相似次元は

である。
本書では説明していないが、この相似次元の考え方を延長したものがハウスドルフ次元である。
「整数でない次元」という概念を理解する事がフラクタル幾何学の第1歩となる。




コメント