シリアへの外国軍の介入は各国の思惑がそれぞれ異なり、例えばトルコの最大の動機はクルド人の勢力を抑える事であるのに対し、カタールの最大の動機は天然ガスパイプラインと関係あると言われている。
天然ガスは石油の代替品としてその価値が上がりつつある。
ガスの生産国はもちろん、パイプラインが通る国もそれだけで大きな利権を持つ事になる。
天然ガスの主要な産地はロシアと中東である。
これまでロシアはエネルギー資源に不足するヨーロッパに天然ガスを輸出し、それを国家の重要な財源にすると同時に、それを武器にしてヨーロッパの政治に影響を与えてきた。

ロシアからヨーロッパへのパイプライン(上図のNORD STREAM)はバルト海底を経由しドイツへ繋がるもので、2011年に稼働を開始した。
ロシアはさらに南部ロシアから黒海、ブルガリアを経てイタリアと オーストリアまで繋がるSOUTH STREAMを計画していた。
この2つはプーチン大統領と深い関係の有るガスプロムが仕切っている。
一方EUはロシアへの過度のエネルギー依存を警戒し、南ルートに対抗するパイプラインを計画している。
それはカスピ海の西岸アゼルバイジャンのガス田からグルジアを抜けトルコを横断するパイプライン「TANAP」を経由した後、アドリア海を通るパイプライン「TAP」によりイタリア南部まで繋がるものである。
TANAPはイギリスのBPが、TAPはノルウェーやスイスの企業が主導している。
これが既に稼働している、エジプトからイスラエルを避けてヨルダン経由でシリアまで繋がるアラブパイプラインと接続する計画である。

2011年、シリアのアサド大統領は このアラブパイプラインとTAP-TANAPパイプラインの接続に対抗するかの様に、イランからイラク経由でシリアを横断するイスラムパイプライン(下図)の計画に調印した。
これが既に稼働している、エジプトからイスラエルを避けてヨルダン経由でシリアまで繋がるアラブパイプラインと接続する計画である。

2011年、シリアのアサド大統領は このアラブパイプラインとTAP-TANAPパイプラインの接続に対抗するかの様に、イランからイラク経由でシリアを横断するイスラムパイプライン(下図)の計画に調印した。
「シーア派パイプライン」とも言われている。
このロシアのSOUTH STREAMとイスラムパイプラインとTAP -TANAP-アラブパイプラインの競合が今のシリア情勢をさらに複雑にしているらしい。
このロシアのSOUTH STREAMとイスラムパイプラインとTAP -TANAP-アラブパイプラインの競合が今のシリア情勢をさらに複雑にしているらしい。
TAP-TANAP-アラブパイプラインによって利益を受けるトルコ、 ヨルダン、エジプトだけでなく、 シーア派国家の結びつきを強めるイスラムパイプラインを妨害したいスンニー派のサウジアラビア、 アメリカなどがシリアの反政府勢力を援助する国とほぼ一致する。
イスラエルはTAPでもイスラムパイプラインでもどちらにしろ不利益となるので両方妨害したい。それにはシリアを内戦状態にするのが最も有効だ。そんな所であるらしい。
一方CIAの戦略はやはりシーア派とスンニー派を対立させイスラム圏を分断する事にある様に見える。
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