中国武術の動きには鞭の様にしなる動きと回転が螺旋形に伝わって行く動きが多く取り入れられている。鞭のしなりは二つの波の合成である事は前に書いた。
回転が螺旋形に伝わる動きは纏絲勁(てんしけい)と呼ばれている。最も単純な纏絲勁はボクシングの右ストレートだろう。右ストレートでは右足首と膝を内側へ捻り込む事で、上から見ると左廻りの力が腰から肩へと伝わって行く。この場合の纏絲は純粋に物理的なものであり、垂直に真っ直ぐ上る螺旋の力線として描く事ができる。
しかしボクシングでもアッパーとなると少し複雑になる。螺旋が湾曲して上から見て右回りの力が正面から見て右回りの力に方向転換して行くのである。
中国武術の纏絲勁は気の流れが加わるのでもっと複雑だ。先ず武術で最も単純な纏絲勁と思われる回し受け逆突きの図を見てみよう。(前に説明した後屈〜前屈式である。)
回し受けの時、気は前足から入り、身体の湾曲によって黄色の線の様に右回りに回転する。腕もその勁路に沿って回転するが、馬弓捶と違ってこの腕は受けの動作でもあるので正面から見ても右回りになる斜めの円を描く。
そして纏絲勁は上右図の赤線の様に後足から発して左回りに回転しながら腰から肩へと上がり腕から拳へ出る。これはボクシングの右ストレートと似ているが、後足の膝を伸ばし踵を着ける事で大地の力を借りる点が異なる。
気は前足から入り力線は後足から発する。気の流れ(勁路)と物理的な纏絲勁は違うものだ。この説明に納得がいかない人は馬弓捶に遡って考えれば分かると思う。
しかし、勁路と纏絲勁は無関係というわけではない。一部合流している。それは受け手を腰に引きながら逆突きをするので上から見ても左廻りの楕円になっているからだ。また後屈になった時の前足と上体の角度によっても勁路は上から見て左回りとなる。
回転する受け手を腰に引く事で勁路と纏絲は合流する。功力拳で「烏龍探海」と呼ばれる動作である。(0:29〜0:40)
「架打」と呼ばれる上段受けと逆突きの同時技では勁路と纏絲は一致しない。ここから分かる様に勁路と纏絲勁は「或る動作と呼吸において」一致するのであり、即時的に自動的に一致するものではない。僕の後屈〜前屈式でも後屈に移る時に吸気しなければ一致しない。
僕は気功と纏絲勁の一致はこういう説明しかできないと考える。他にこんな説明の仕方が有るよという人は教えてもらいたい。
太極拳の纏絲勁は下の資料で説明されている様にもっと複雑で精妙なものである。





コメント
コメント一覧 (4)
中国武術では「気血の流れが~」みたいな言い方をすることがありますよね。気と血は同じものではないのだろうとは思いますが、関連があるのかもしれないと考えています。
ミトラ
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パンチの打ち方もボクシングとムエタイと空手、中国武術では微妙に違いますね。
ボクシングでは左ジャブ、左ストレート、左フックは左足を捻り込むと教えます。
ジムによっては左ストレートは左足を捻るがジャブは捻らないと教える所もあります。ムエタイでは初めからボクシングのストレートとフックの中間の様な斜め下に振り下ろすパンチを教えます。
キックジムはどう教えるか分かりませんが、確か格闘技通信でピーター・アーツが慈雨風雷さんの言う様な、後足で蹴って体重移動する力で左ジャブを出すと解説していました。実戦的にはそれもありかもしれません。しかしボクシングの理論では邪道という事になりますね。
ミトラ
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