今さらこの歳になってブリティッシュ・ハードロックなど全く聴く気は無かったのだが、今日はつなぎにレッド・ツェッペリンの話でもしようか。(笑)

ツェッペリンはロックの中でもとりわけ思想的に許容できないバンドで、その多くが卑猥な歌詞だし麻薬や悪魔主義、反道徳の香りがプンプンなのだが、たまにそうでない曲もある。ファーストアルバムの「Baby, I'm Gonna Leave You」などは今聴いてもとても美しいメロディーと詩だ。

また卑猥な歌詞と言うなら黒人ブルースだって負けてはいないはずだ。白人ロックの卑猥さだけを嫌悪するのも筋が通らない。多少の猥雑さは目をつぶって「ブルースの発展」やコード進行的に興味深い物はロックでも取り上げていきたい。「Am  G  F  E7」「Am  C  D  F」などのコード進行の系統発生は非常に興味あるテーマだ。






今日何故「Stairway to Heaven」について書く気になったかと言うと、日本人の訳は詩の意味をほとんど分かっていないと思われるからである。僕はこういうのは黙っていられないタチなのだ。(苦笑)

日本の解説者の多くは「世の中全て金だと思っている強欲な女への皮肉」を歌っていると解釈している。これは全くの見当違いだ。第一それではこの幻想的な曲想とまるで合わないではないか? 
次の資料が比較的まともな訳をしている。


https://lyriclist.mrshll129.com/ledzeppelin-stairway-to-heaven/


結論から書いてしまおう。この曲は19世紀末にイギリスで一世を風靡した魔術結社「黄金の夜明け団」とそこで修業する女性の魅力を描いているのだ。
 外国ではメジャーなこの解釈が日本では何故信じられていないのか不思議でしょうがない。


ジミー・ペイジがツェッペリンを結成した当初から魔術結社に入っていた事はファンの間では常識であり、彼がアレイスター・クロウリーを尊敬しクロウリーの家を買ったのも有名な話だ。イギリスの魔術結社と言えばほぼ全てが黄金の夜明け系である。

There's a lady who's sure  all that glitters is gold  



この歌い出しは強欲な女性などではなく、世界の全てが「黄金の夜明け」のためにあると信じて疑わない女性を指している。


黄金の夜明け団の正式名称は「The Hermetic Order of the Golden Dawn」である。
ヘルメス結社、つまり錬金術の結社である。もちろんインチキ化学実験で鉄を金に変えようなどという古くさいものではなく「生命の木」の呼吸法と瞑想で体内に黄金を生み出そうとするものだ。

そのつもりで聴くと「Gold」の他にも魔術結社を匂わせる単語が幾つか出て来るのに気づく。「Dawn」「May Queen」「path」「piper」などなど。



この女性は自分の修業が天国への階段であると信じて疑わない。この確信の強さは恐らく幹部である事を示唆している。例えば黄金の夜明けの首領であったマクレガー・メイザースの妻、モイナ・メイザースのような女性を想像してみるのも面白いだろう。

          ADB7C3EB-0CDA-43C9-9FF8-19033F252676                           
   黄金の夜明け団の幹部だったモイナ・メイザース 

モイナはあの哲学者ベルグソンの妹である。メイザースと結婚して以来、生涯黄金の夜明けが真実の光を回復する道と信じ、最後には修業のため断食をして自ら命を絶った。

彼女はダイアン・フォーチュンと喧嘩した事でも有名だ。ダイアンも黄金の夜明けのメンバーでモイナの弟子だったが、ダイアンがインスピレーションで書いた書が黄金の夜明けの秘密を暴露しているとモイナが詰問したのがきっかけだった。ダイアンはそれを否定しモイナはダイアンを破門、心霊的攻撃を仕掛けた。それ以来ダイアンとその友人は猫の幻覚に悩まされた。その顛末はダイアンの「心霊的自己防衛」に詳しく書かれている。



1960年代後半はロックのスター達の多くが魔術に惹かれた時代だった。ディープパープルのリッチー・ブラックモアもそうである。不良少年のツッパリ、世間的道徳への反感から魔術結社に入った彼等は100年前のモイナのような純粋な求道者のタイプに驚嘆しただろう事は容易に想像できる。そして恐らく60年代における結社にも似たタイプの女性がいただろう。彼女はそれが「天国への階段」と信じ切っている。しかし20世紀の不良少年達はむしろ「地獄への道」「悪魔主義」を求めて入団したのだ。

Oh, makes me wonder.  

この言葉は眩しい彼女への驚嘆のため息であると同時に「この階段は天国へ登る階段なのか? 地獄へ堕ちる階段なのか?」という疑問でもある。
そんな前提の下で歌詞を超訳してみた。


その女性は全ての高貴なるものは黄金へ通じる道だと信じた
そして自分の歩む階段は天国へ続くのだと

彼女はそこへたどり着けば望んだものが手に入ると信じた
しかし店がすべて閉まっていたとしたら?

壁に注意書きがあっても彼女は確かめたがる
言葉は時として二重の意味を持っているから


小川に沿った樹上で鳥が歌うのを聞けば

全ての思考が誤解だったと解ることもある

西の方を見れば或る感覚に襲われ
過去を想い魂が涙を流す

幻想の中で見てきた景色、木々の間の煙の輪と
それを見守る者達の声

やがて彼等はこう囁く
私達がその調べを唱えれば
笛吹が私達を真理へと導いてくれるだろうと
長く耐えた者には新たな夜明けが訪れ
森には笑い声がこだまするだろうと

生垣の中からざわめきが聞こえても驚かなくていい
それは五月の女王を迎える為に掃き清める音だ
君の進む道は2つに分かれている
だけど長い目でみればまだ進路
を変える時間もある

君の頭の中で唸る音が鳴りやまないのは
それは笛吹が君を誘っているんだ
女よ、風が吹くのが聴こえるか
君が求める階段はその風のように揺れ動く不安なものだ

道を下っていけば
私達の影は魂よりも高くそびえ
皆知っているあの女が歩き
白光を放って示そうとする
すべてを黄金に変える方法を

君がじっと耳を澄ませば
ついにあの調べを思い出すだろう
全てが一に、一が全てになる時
階段は岩のように堅くなり
もう揺れ動く事はない