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辺りに地鳴りの様な低い音が響いていた。それは「ゴー」というよりは「オーン」と聞こえた。人間の耳で聞き取れる限界の低さだが妙に鼓膜を刺激する圧迫感があり微かな地面の振動を伴っていた。

ダリの「燃えるキリン」の中へ入って先ず気付いたのはこの地鳴りと大気の発光である。外から見ると夕方の空、しかしそれにしては明るい不思議な空に見えたが、それは空気自体が発光しているからだったのだ。

燃えるキリンは遠くをゆっくりと歩く。身長50mはあろうかと思われる巨大な女性が二人、悶え苦しみながら歩いている。脚からは欲望の抽出しが飛び出て、背骨からも何か蛇の様なものが飛び出している。蛇は一つ一つの脊椎骨から一つずつ出ているように見えた。オーンという地鳴りに誘われそれに合わせて飛び出して来たのだ。

私は理解した。地鳴りは地球が自転する音であり、しかもそれが女巨人の尾底骨に共振してクンダリニーを暴れさせているのだと。
オーンという地鳴りの音はマントラのAUMに近い。いや、本来マントラのAUMがこの地球の自転する音をヨーギが聴き取ったのかもしれない。

不気味な地鳴り音とクンダリニーの熱と空気の振動と発光、全てが共振しているのだ。しかもこの振動の波形は凶々しき波長と波形だ。それがキリンを燃やしているのである。

「凶々しい青」それがダリの絵を理解する一つの鍵である事を私はアストラル投射でようやく知った。
「風の谷のナウシカ」で王蟲が怒り、腐海が溢れる時に老婆が感じ取った「大地の怒り」・・・・

だが問題はダリがその「大地の怒り」に共鳴できずにいる点にある。彼の性的サディズムの故に。彼は戦争を予感しながらそれよりももっと恐ろしい悪魔を自分の中に認める故に世界に対しシニカルな態度しか取り得ないのだ。