毎年真夏の猛暑日には何故か初期の激しいサンタナを聴きたくなるのだが、これも再掲だ。
最近はサンタナをほとんど知らない人が多いようでサンタナで一番好きな曲は?と聞くと「哀愁のヨーロッパ!」(苦笑)などという情けない状態なので我々の世代がサンタナの凄さをしっかりと今の若い世代に伝えていかねばならないのだ。使命感を持って再掲しよう。

「ネシャブールの出来事」は基本はブルースだが、9thや13thなどジャズのテンションを駆使する事で白人ロックには無い黒いサウンドに仕上げている。

「ネシャブール」という地名についてサンタナ自身はハイチの黒人革命家トゥサン・ルヴェルチュールがフランス軍を撃ち破った場所と説明しているようだが、これはサンタナの勘違いで、13世紀にモンゴル軍とペルシア軍が戦ったニシャプールというイランの地名と混同したようである。

しかしいずれにせよサンタナは3rdアルバムでも「Toussaint L'Overture」という激しい曲を書いておりハイチの黒人革命家トゥサンに大きな思い入れがあったようなのである。

ハイチ革命の発端となった「カイマン森の決起集会」についてはここに資料がある。
http 
集会に集まった黒人奴隷たちはヴードゥーの神官に従って黒豚を生贄にする儀式を行って武装蜂起を誓ったのである。ハイチ革命はヴードゥー革命だったのだ。(!)

なるほど、そう考えれば2ndアルバムのジャケットの魔術的な雰囲気も理解できるというものだ。そこには最も有名な曲「ブラックマジックウーマン」と思われる女性が描かれている。
それは「黒人の魔女」なのか、それとも「黒魔術の女」なのか、高校の頃よく議論したものだ。(笑)
ようやくその答えが確定した。どちらもなのだ。黒人の女、しかもヴードゥーの神官、しかも革命の闘士! サンタナはそのイメージに高揚を感じていたのである。

その「ブラックマジックウーマン」を聴いてみよう。

 


サンタナは売れない時代はストリップ小屋のどさ回りをしていたそうだ。彼のギターの色っぽいツヤはその辺に秘密の一端があるかもしれない。サンタナ・バンドのセンスの良さはもちろんギターだけではない。ベースもコンガもキーボードも全てが最高だった。

この絶妙なベースのタイミングを聴いてもらいたい。他楽器よりほんの微かにテンポを遅らせてズラしているのだ。これこそ白人や日本人が逆立ちしても真似できないアフリカのセンスだ。

初期サンタナの激しさは、彼がヒンドゥー教に傾斜していく以前に憧れたヴードゥー魔術とハイチ革命、黒豚の生贄儀式に見られるディオニュソス的エロスに関係している。