安田喜憲氏の「龍の文明、太陽の文明」を読み終えた。
僕が以前「神話における牛と蛇の意味」を書いた時に中国の龍や蛇についてあまり詳しく書かなかったのは、この書の龍の起源についての説が僕の蛇・龍の考察を全否定する可能性があったからである。
しかしKindleでざっと読んだ結果、その心配は無いと結論した。その理由は長くなるのでまたハーディングの後にこの書の要約と感想として書く事にする。が、結論だけ言えば安田氏は考古学的、自然人類学的アプローチのみで神話の内的イメージについてのイコノロジー的な考察が欠けている。
これは文学・哲学を語らずに人間の精神を全て大脳生理学から説明しようとする唯物論者の思考に似ている。今の日本では特にこういう思考方法がもてはやされがちな事に僕は危機感を覚えている。僕は今後も「現象世界の意味連関」を問う思考様式を大切にしていきたい。
具体的にはディルタイの解釈学、パノフスキーのイコノロジー、ヴェーバーの理念型、ユング派の元型論、ビンスワンガーやメダルト・ボスの実存分析、ヘーゲルの歴史哲学などである。
「大宇宙と小宇宙の照応・一致」は因果連関を追う思考者の前にはその相貌を現さない。モナドには窓が無いからである。ケストラーの「ホロン」は窓が開かれているが、因果連関を追うだけでは「パターン認識」を意味あるものにする事ができない。
僕は意味連関を追う学を広げ、深めたいと思う。認知科学、心理学、社会学、風土論、考古学などはその補助的役割りとしてなら大いに期待できる。
具体例を一つ示そうか。
ニュートンの運動方程式は物体内の無数の点を「重心」という一点に代表させる事で初めて成立する。これは因果連関を追う思考からは出て来ないものだ。因果関係を追えば「三体問題」の沼に嵌るだけである。
これはニュートンに限らない。世界の動態を数学的に記述する事は無数の点を「重心」に代表させる事で初めて可能となる。
そしてこの「重心に代表させる」事は国民の意志を議員に代表させる「代表制民主主義」と相似象をなしている。
代表制民主主義とニュートン力学は裏表である。

コメント
コメント一覧 (4)
今度のはハトホルだと思いますが何人もいるのが不思議ですね。今後カバラーに話題を転換するので気分を変えてみようと思いました。
他にも仏像やヒンドゥー寺院、もののけ姫のデイダラボッチなどを用意しております。
あまり深い意味はありません。笑
ミトラ
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しかし今後は星占いも視野に入れていきますので貴方の言う「流星と政変の関係」なども考察対象となるかもしれませんね。
あとはまた明日ゆっくりと。
ミトラ
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『森を守る文明 支配する文明』(PHP新書)、『地球文明の寿命』(松井孝典氏との共著)(PHP出版)
上の記事の本質に関係ないコメントですいません。
なお『森を守る文明 支配する文明』には、神話に触れた記述もありました。
ミトラ
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ミトラ
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