前回の最後に挙げたURLはシュタイナーの講演を日本の高橋巌氏が和訳し、それをさらに「シュタイナーから読み解く神秘学入門」 のブログ主、5dolfin氏が要約したものである。本当は高橋巌氏の訳を直接読めれば良いのだが、「シュタイナー研究室」(http)で探しても見つからなかった。
シュタイナーのカバラー論は大雑把に言って次の二つの骨子からなっている。
① セフィロートをシュタイナーの「オカルト生理学」に即して読む
② セフィロートを「ルルスの結合術」に即して読む
② セフィロートを「ルルスの結合術」に即して読む
この②のルルスの問題は突っ込んでいくと分析哲学を本格的に勉強しなければならず僕の能力を遥かに超えるのでその周辺の思想史的状況を概観するにとどめよう。今回は①のオカルト生理学的カバラー理解について書く。
シュタイナーによれば宇宙的な力が周囲から人間に働きかけている。三つの力が頭部に、三つの力が胸部と血液循環に、三つの力が腹部と両手脚に、最後に10番目の力が大地から人間に働きかけている。これは明らかにフォーチュンの言う「至高の三角形」「倫理の三角形」「アストラルの三角形」最後はマルクトを指している。この三つの三角形に頭部、胸部、腹部を当てはめるのはいかにもシュタイナーの心身並行論的な発想で、その妥当性は節足動物の体節がムカデ型から頭部、胸部、腹部の三つに集合した昆虫型に進化した事からも直感的に納得できる。
ムカデ型と昆虫型では体節形成の仕方に違いがある事は前に述べた。(http)
ムカデ型は前から順番に体節が形成され、昆虫は全体の体節が同時に形成される。流出論がムカデ型に、シュタイナーの説明が昆虫型に相似している、と僕は考える。
シュタイナーのカバラー論の何処を見てもセフィラから次のセフィラが流出するという説明はされていない。シュタイナーは三つの三角形を動物の空間的配置と重ねる事で時間的、継起的な流出論を捨てているのである。
これは非常に特殊な解読であり、それによって前回指摘した二つの矛盾を回避する事ができる。一つは「世界の成り行き」と「霊性進化」が逆向きとなるカバラー(この点は伝統的キリスト教神秘主義も同様である)と、その二つが並行するシュタイナーの矛盾。もう一つは人間の徳目を並べたかに見えるセフィラと流出論を重ねる事の難しさである。
シュタイナーのカバラー理解は流出論を捨てている。先ずこの点を踏まえて次に進もう。

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