ユーミンの最新アルバムはコロナ禍の最中に発表された。疫病の大洪水に没した街で「愛しか残らない」とユーミンは自身のメッセージを残した。

深海の街・・・・それは無意識の海だ。しかし真っ暗な無意識ではない。透明感のある音、深海にしては不思議なほど光が射しているのだ。

はるか上に水面が波打ち、青い月を揺らしている。この深海の意外な明るさは月の光によるのだろうか? いや、それだけではないようだ。

無意識の海の底から響いて来る孤独の呼び声、「君」はその声の主を救うために無意識の底へ降りて来た。「君」は上を見上げる。渡り鳥の群れが渾身のストロークで弧を描いている。希望に満ちた自由な飛翔、その希望の光が深海を照らしているのだ。

「君」は下に孤独の呼び声を聴き、上に自由な飛翔を見る。「君」は孤独の呼び声にゆっくり背を向けた。それは自分の声だと気づいたからだ。

コロナ禍も、戦争も、憎悪から発する。そしてその憎悪は孤独から発する。

帰らないと言った
出逢う以前のあのふたりに
待っていると答えた
君の帰りを永遠に 

分裂した自己を取り戻した時、無意識は意識の光に照らされ、孤独の呼び声は消えるだろう。その時「君」は自分がユーミンであることを思い出す。