以前に別のサイトへ投稿した時は全ての単語に細かい意味を探り過ぎたし一貫したストーリーを求め過ぎた。今では言葉に対してもっと別の接し方ができると思う。
今の僕にもCIAなどのスパイの世界が描かれている事はもちろん明白だ。007のテーマを思い起こさせるベースのリズムと叫ぶ様なオルガン、そこは恋愛も女の武器、男の武器として利用され使い捨てにされる非情の世界だ。殺人やレイプさえ日常である。
そして「恋は全てイミテーション」であるはずのその世界の人間が「本当の恋」をしてしまったらどうなるのか? そんな悲劇が語られているらしい。ここまでは分かる。それ以上は詮索しなくていいと思う。
それよりも、この非情の世界に陽水の甘い口調が違和感なくフィットしているのは何故だろうか?
それが現実ではなく陽水の作った幻想世界と分かっている安心感があるからだろうか?
そう考えると一つ思い当たる事がある。若い頃の陽水のほとんどの曲が自分の「傷」或いは「ナイーヴな自分自身」を歌っていた。しかし結婚して娘もでき、歳を取って精神的にも安定した彼は自分の人生とは無関係な幻想世界で遊ぶ余裕が出てきたのではないだろうか?
いずれにせよ、描かれた非情と語り口の甘さの意外な結合がかえってこの曲を心地良いものにしている。小島良喜の「叫ぶオルガン」のカッコ良さにシビれながら聴くのもまた一興。
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