今の僕はそうでもないのだが、ジャズを聴き始めた20代の頃はとにかく黒っぽい表現、そしてブルーな表現を「飢えた狼の如く」求めていた。そしてオスカー・ピーターソンの「Whisper Not」と同じくらい衝撃を受け心酔したのが本田竹広である。
その頃の僕はジャズ特有の「グシャッ」という硬質なテンションコードもブルーノートの上に1音や5音を重ねる響きも全てが新鮮で、全く未知の世界を探究する驚きと新しい発見に酔いしれた。そしてこの初めて聴いた本田竹広の音の黒いこと黒いこと! 正に「全身の毛が逆立った」ものである。ジャズでこれほどの興奮を味わったのは、その後コルトレーンの「Wise One」を聴くまで30年以上無かった。
本田氏はデビュー当時から「日本人離れした黒っぽいピアノスタイル」として有名だったようで、しかもエネルギッシュであり、彼が来るとだいたいピアノの弦が何本か切れたそうだ。
残念ながら2006年に心不全で亡くなったが、今も僕が最も尊敬するジャズピアニストの一人である。
「これでもか、これでもか」 とばかりにノリまくる若き本田氏の硬質なコードとフレーズに身を任せよう。
コメント