奴が引き金を弾くのが一瞬早かった
弾丸はゆっくり回転しながら真っ直ぐ俺の方へ・・・
だが体は動かない
眉間に食い込む鉛の塊
血飛沫の上がった瞬間
俺の意識は体を離れた
俺は5mほど上から自分の身体を見下ろしていた
頭蓋骨が砕け、脳が後方へ飛び散るのが見える
自分を憐れむ自分
可哀想な男だ
神も仏も信ずる事なく
一生誰からも愛されず
場末の喧嘩で死んでいくのか
来世はまた修羅界に転生し
のたうち回るだろう
ふと上を見れば
血に染まった真っ赤な空に
なんと
お前の様な奴でも
救おうとしているのだ
だがお前はそれに気づかず
また修羅界を選ぼうとする
何処までも哀れな奴だ
その時 俺の頭の中で
誰かの声が聞こえる
その静かな声は
言葉を介さず直接心に響いた
お前はまだ解らないのか
切った貼ったが修羅じゃない
前世で心中したと?
俺は思わず千手観音に尋ねた
最後に頭と後輪が消えた後
俺の脳内に一つの言葉が残された
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