ハロウィーンのデートは二人の別れで終わった木枯らしの吹く薄ら寒い夕暮れ彼の乗ったバスが去った後輝きを無くした街の人々はどれも同じ顔に見える
どうして別れたのだろう? 男が女を理想化して見過ぎたから「たぶん貴方の愛した私はどこにもいない」
彼の理想像を演じ続けるのが彼女には次第に負担になったのだそれは今では彼のわがままにしか見えない
「もう訪ねて行けない」会ったらわがままな彼をまた許してしまいそうだから
別れの時、彼女は「イノコヅチ」の実を一つ取ってキスをして彼のセーターの背中に投げた彼は気付かない
それは「言えなかった想いを残らずこめるように」
家のストーヴの前でセーターを脱いだ時
彼はイノコヅチに気づくだろう
そこに込めた彼女の気持ちにも気づいて欲しいと彼女は願う
しかしそれは無理だ
彼は最後まで別れの理由に気づかない
一方通行のまま放っておくのは
「言えなかった思い」だから
思いを言えなかったから
ひたむきな貴方を私も愛したのだ
でもそれは「若さが作った幻」だった
彼女はりんごのにおいと風の国
孤独な冬へと去って行く
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ミトラ
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