文字の美しさを美術として極限まで発達させたのは漢字文化圏だけではない。アラビア文字やペルシア文字にも素晴らしい文字美術がある。

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https://www.nippon.com/ja/people/e00028/

本田孝一氏は日本アラビア書道協会の会長である。中東地域の地図を作るプロジェクトの通訳としてサウジアラビアに派遣された時に出逢ったのがキッカケだったそうだ。

漢字に楷書、行書、草書などがある様に、アラビア文字にも8種の書体があり、一つの書体をマスターするのに20年かかると言う。

本田氏は初めは「書法を守らずに書いているから全然駄目だ」とダメ出しをされた事もあったらしいが、そんな厳しい世界で何十年も研鑽を続け2000年には師匠のトルコ人書家、ハッサン・チェレビー氏から免許皆伝を認められた。上のは本田氏の作品で「青の方舟」と題されている。

もう一点、本田氏の作品。題名は「祈りのピラミッド」である。

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一方ペルシア書道はアラビア書道の影響を受けて成立したらしい。 ペルシア書道の日本における第一人者、角田ひさ子氏は大学時代にペルシア語を勉強する内にペルシア書道に出逢い、通信教育で習った後、イランへ留学して現地で直接指導を受けた。


イランは詩を愛する国民性であり、アラビア書道のように絵画として描くというより、詩の一節を美術的に描くというものが多いようだ。アラビア書道に較べて優美で柔らかく感じられる。


角田ひさ子氏の作品を詩の和訳とともに3点挙げよう。


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命であり知である神の御名において 
そこは人智など到底及ばぬところ 
・・・「王書」序章より 




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あぁ友よ、さあ、明日を悲しむのはやめよう 
この命の一瞬を有意義に使おう
・・・オマル・ハイヤームの詩より





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賢者よ 助けて、心が手綱から離れ
あぁ、秘めた愛の秘密が暴かれてしまう
・・・ハーフェズの詩より